技術優秀賞

技術優秀賞とは

申請のあった日本木工機械展への出展物のうち、木材産業及び関連産業の発展に寄与する優秀なものと認められた製品に技術優秀賞が授与されます。
選考にあたっては、木材・木材加工の学識経験者及び木材産業の需要者からなる審査委員会が、事前の個別書類審査と合同現物審査を実施します。技術水準、独創性、経済効果等の評価に基づき、審査員の合議により、5点を目途に選考されます。
受賞発表及び授賞式は、日本木工機械展開催中に展示会場にて行われます。

技術優秀賞 授賞式

日時: 2025年10月2日(木)15:00~
会場: ポートメッセなごや 第1展示館 ホワイエ

本賞は、産学官から選ばれた 12名の審査員 による厳正な審査のもと、11製品がファイナリストに選出されております。当日の授賞式では、その中から優秀賞5製品を発表しました。
ファイナリスト製品の紹介映像を上映しながら、それぞれの技術的な特長や選考の背景をご紹介。出展者の皆様にも、その場で受賞の瞬間をご確認いただける、臨場感あふれる発表の場となりました。


2025 技術優秀賞

小間番号出展者名製品名
C22兼房株式会社ポリゴノビットWB
F15株式会社 太平製作所T-スキャナーW
E15株式会社 フクモト/SAWSTOP LLC安全機構付き軸傾斜丸鋸盤 SawStop
F16宮川工機株式会社柱材加工機 MPS-36
F17株式会社 名南製作所ニューホットメルトスカーフコンポーザ NHS-L6

技術優秀賞 審査講評

審査委員長 土川 覚
(名古屋大学教授)

日本木工機械展/Mokkiten Japan 2025 の技術優秀賞規定に基づき、出展者から申請のあった 23 点の出展物について審査した。 審査委員会は、 木材ならびに木材加工の学識経験者および木工機械の需要家からなる12 名で構成された。出展者から提出された申請書に関して各審査員が事前に個別で書類審査を実施し、ファイナリストとして 11 点の出展物を選考した。そして、展示会場に於ける合同現物審査を経て、技術優秀賞に相応しい出展物として 5 点を選考した。 (順序は、評価点数順ではなく、出展者名の五十音順である)

選考に当たっては、(1)技術水準、(2)独創性、(3)経済効果の 3 項目を中心として出展物の評価を行った。技術水準では、品質、開発の合理性や難易度のみならず、安全や環境に対する配慮も含めて評価した。独創性では、部分的に優れた独創性があるもの、萌芽段階であるが将来性が見込まれるもの、特許出願の有無なども考慮した。経済効果については、付加価値や歩留まりの向上、省資源・省エネルギー・省力化、廃棄物処理、木材の有効利用への寄与など、多面的に評価した。このような観点から技術優秀賞として今回選考された 5 点についての評価は概ね以下の通りである。

ポリゴノビットWB(兼房株式会社)
従来の PCD ビットに比べて強度・耐摩耗性を大幅に改善した点が高く評価された。特に、多角形 PCD チップの採用により刃先欠損リスクを低減し、工具寿命の延長と段取り回数の削減に直結している。これにより、省エネルギー化や加工現場の安定稼働に大きく寄与することが期待される。木材加工分野における普及性も高く、業界全体の効率化に資する技術革新といえる。

T−スキャナーW(株式会社太平製作所)
中小規模工場でも導入可能な低コスト・高精度のスキャナーとして注目された。 LED ライン投射と画像解析による欠陥検出機能に加え、クラウド連携による柔軟なデータ利用も可能であり、従来は大型工場に限定されがちであった自動検査を広範に普及させる潜在力を持つ。品質検査の効率化とコスト削減を両立し、産業全体の底上げに寄与する点が評価された

安全機構付き軸傾斜丸鋸盤 SawStop(株式会社フクモト/SAWSTOP LLC)
人体接触を瞬時に検知し、刃を停止させる安全機構は、従来の丸鋸作業における重大事故防止に直結する画期的な技術である。重篤事故を未然に防ぐことで、作業者の安全性を飛躍的に高め、安心感を与えるとともに、業界全体の安全水準を新たな段階に引き上げるものである。安全性と生産性の両立を実現した点が特筆される。

柱材加工機 MPS-36(宮川工機株式会社)
従来は多工程を要した柱材加工を一台で連続処理できる機構を備え、段取り短縮と自動化を同時に実現した点が高く評価された。設備としての先進性に加え、生産性向上やコスト削減、品質の安定化に大きく貢献するものであり、生産ラインへの導入効果が極めて高い。業界をリードする革新的な機械として期待される。

ニューホットメルトスカーフコンポーザ NHS-L6(株式会社名南製作所)
スカーフ継ぎと貼合工程の品質不安定という課題を、新方式の加工とコンポーザーの組み合わせによって解決した。高精度な貼合と欠点除去を同時に実現し、合板・LVL の歩留まり向上と品質安定化を可能にした点が評価された。さらに、保守性の向上にも寄与し、合板産業全体の技術水準を押し上げる装置として高い将来性を有する。

以上の 5 点以外では、
(1)複数刃を組み合わせた構造により効率的かつ安定した切断を可能とし、大量生産ラインでの生産性向上と品質確保に大きく寄与するクアッドバンドソー、(2)独自の調整機構を備え、帯鋸歯の仕上がり精度を高めるとともに現場作業の効率化に貢献する有用な装置であるドクターS、(3)CNC 技術にIoT を活用した接続性を備え、機械稼働状況の把握やデータ活用を可能とすることで、スマートファクトリー実現に向けた高い将来性を示したconnected CNC router、(4)被削材に応じて自動で最適化する調整機能を有し、歩留まりの向上と仕上がり品質の安定化を両立することで、省力化と効率的生産に大きく貢献する自動調整式トリミング装置、(5)高品質ラミネートを安定的に実現し、多様な用途への適応性と加工精度の高さを兼ね備えたAPS ラミネータ、(6)高周波技術を応用して短時間で強固な接着を可能にし、大型・厚物部材にも適用できる汎用性の高さを示した高周波フラッシュ接着機、なども選考過程で大いに注目された。

なお、受賞歴のある出展者からの出展物も選考されているが、あくまでも現行の審査基準に則って公平に審査した結果である。

木工機械・木材加工分野は、現在、省力化・省人化、安全性・品質安定化、そしてデジタル化・知能化が重要な課題となっている。特に国内においては、職人技の継承や人手不足といった構造的課題が顕在化しており、それを補完・発展させる機械技術の役割はますます大きくなっている。今回の技術優秀賞受賞およびファイナリスト機器群は、単なる性能向上にとどまらず、現場の実務的ニーズを的確に捉えた改良・発明が多く見られた。
今後は、これらの技術が大規模生産現場のみならず中小規模事業者にも広く浸透し、木材産業全体の基盤を支えることが期待される。また、IoT 連携や遠隔モニタリング、AI 制御といったデジタル要素の統合は、産業の効率化と国際的な競争力強化に不可欠である。
さらに、サステナビリティや循環型利用、地域材活用といった社会的要請への対応も不可避である。木工機械・加工機器は、単なる装置開発から、資源・環境・人をつなぐプラットフォーム技術へと進化すべき段階に差しかかっていると考える。
本技術優秀賞において提示された技術群が、展示会場での発表にとどまらず、実際の生産現場へ移植・定着し、次世代木工産業の基盤を形成することを強く期待する。


技術優秀賞 ファイナリスト

今回の展示会では、より多くの出展者の皆様にご参加いただけるよう、「技術優秀賞」に新たな取り組みとして ファイナリスト制度 を導入いたしました。
従来は受賞製品のみを発表しておりましたが、今回は事前の書類審査を経て、10製品をファイナリストとして選出します。

しかしながら、今回は各出品内容が非常に優れていたため、審査は極めて難航し、審査委員会にて慎重な協議を重ねた結果、ファイナリスト数を11品に拡大させていただくこととなりました。

ファイナリストは会期前より新聞、雑誌等で公表されます。
また来場者の皆様にも注目していただけるよう、各ファイナリストのブースには 「ファイナリストバルーン」 を設置します。

さらに、展示会初日に現物審査を実施し、技術優秀賞授賞式において、ファイナリストの中から最終的に 「技術優秀賞」5製品 を選定いたします。

小間番号出展者名製品名
E24オーアイ・イノベーション株式会社クアッドバンドソー
E24オーアイ・イノベーション株式会社ドクターS
C22兼房株式会社ポリゴノビットWB
E13SHODA株式会社SHODA connected CNC router CS100
F15株式会社 太平製作所T-スキャナーW
E15株式会社 フクモト/SAWSTOP LLC安全機構付き軸傾斜丸鋸盤 SawStop
E22丸仲商事株式会社自動調整式トリミング
D15株式会社 丸仲鐵工所APSラミネータ PL-500PUR/APS
F16宮川工機株式会社柱材加工機 MPS-36
F17株式会社 名南製作所ニューホットメルトスカーフコンポーザ NHS-L6
B37山本ビニター株式会社高周波フラッシュ接着機 BONDEX-Vi